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夢大多亭
夢大多亭
バッカスに選ばれし者です
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2007年03月31日

しっかりしなくっちゃ。

 ひとつ後ろの席のご婦人が、レストルームに立ったついでに、コントローラーパネルを操作して冷房の温度を下げた。
「ちょっと暑いわね」ご婦人のワンピースは、セロリアンブルー地にグレーの花模様のリバティプリントである。きっちりベルトマークされたデザインではあるけれど、半袖だし襟元も開いているので、いかにも涼しげなのだが。
 彼女は席に戻る前に、改めて連れのご婦人に同意を求めた。
「まだ、暑いわね。貴女、暑くないこと?ねぇ、もう少しだけ下げてみましょうか?」
返事を待たずに、パネルは操作された。彼女の長い真珠のネックレスが、じゃらじゃらと鳴った。
 席に座っても、なんとなく、まだ落ちつかない様子で、ブランケットを丸めたり、クッションの位置を直したりしていたが、
「ぜんぜんだめよ。さっぱりクーラーが利かないんだわ」と言い放つと、意を決してまた席を立ち、パネルを激しく操作した。そしてやっと、これでいいわとゆうふうに肯くと、ゆるやかにウエーブがついた、銀髪のカールのひとつを右耳にかけた。彼女の、むっちりした右の二の腕が、ぶるんと揺れた。

 えー、いま密やかに、ビジネスクラスが、『クーラージャック』されました。あぁ、ビジネスクラスにご搭乗の皆様、目を覚まして下さい。当機はただいまシベリアのツンドラ上空にあって、皆様の命は凍死の危機にさらされかけております。
 わたしはとにかく、3枚のブランケットをアテンダントに要求し、まず、半袖Tシャツで眠りこけている良さんを、ブランケット2枚でぐるぐる巻きにした。もう1枚は自分で頭から被り、イスラム教徒の女性のようにしてみた。考えても見て欲しい。わたしの格好を。先程の3点セット、プラス、ブランケットである。
 しかし一瞬、ツララだらけになり、真っ白に凍りついた機内の様子が頭をかすめた。わたしは生き長らえて、全てを証言しなければ、ならないのだわ。
 しっかりしなくっちゃ。しっかりしなくっちゃ。

 良さんに肩をたたかれ、目を覚ましたわたしに、アテンダントが尋ねてきた。
「Mrs.SASAKI, ブレーク・ファーストのお飲み物は、何になさいますか?」

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この記事へのコメント
>夢大多亭様
(‥ )ン? ひょっとして夢大多亭様の夢だったのですか?

それにしても、冷暖房は好みの温度も人によって違いますよねぇ
あまり冷やしすぎるのは身体にも悪いし大変でしたね(^^)
Posted by モルト大好き at 2007年03月31日 23:18
モルト大好きさま
いえ、事実にもとづくお話です。(^^)
ツララの想像をしているうちに、眠りこけてしまいました・・・(^^;
Posted by at 2007年04月02日 07:21